受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 あの白い部屋に俺はいた。


(俺は一体何者なんだ!? 小松成実二世を目指した訳ではなかったのか!?)


俺は眞樹の携帯で十八禁ゲームをやった時のことを思い出していた。


子供の頃から放ったらかしで、母は仕事優先。
母一人子一人だから仕方がないと諦めていた。

俺の遊び部屋は真っ白で、どんなに落書きしても怒られなかった。

俺には分かっていた。
母が天才画家として育てようとしていることが。

時々真っ白い部屋が映写室になった。

女性が、五感の全てを使って絵を描いていた。

それが誰なのか解らない。でも俺には解っていた。
母が俺の進むべき道を示しているのだと。

俺は今完全に幽体離脱している筈だ。


(幽体離脱!? そうか、それで飛ぶんだ。そうだよ。俺はエスパーか何かだ。だから宇都宮まことの裸体がこの手で描けるのだ。俺の本体はどっちなんだ? 携帯画面を食い入るように覗いている俺か? それとも?)

ドキドキが収まらない。
俺は頭を抱えた。




 (初めは……そうだ、確かエスパーだと思っていた。そうだよ。アンビエンス・エフェクトで遊んでいた時そう感じてたはずだ。でも何かが違う! 俺はモンスターなのかも知れない。その中でも一番可能性があるのは……そうだヴァンパイアだ。俺は実験でヴァンパイアにさせられたのだ。あっ、だからトマトジュースなのか?)

俺は自ら導き出した答えに鳥肌を立てた。


(ん!? えっ、えっー!? 嘘っ!?)

ヴァンパイアなんて、本当は考えてもいなかった。
ただ何となく脳裏に浮かんだだけだった。

でもそれは的を得た答えだったようだ。


真っ赤に熟れたトマトを潰し、その中に血を注ぐ。

俺はドラキュラになる運命だったのだ。


それこそ本当のfakeだ!!

俺をもてあそび……
俺を壊す……
俺は一体誰だー!!
何故此処に居る!?


(俺は何故この世に産まれて来なければならなかったのだ!! 俺をヴァンパイヤとして育てるためか? ヴァンパイヤとして覚醒させて、まことと契らせるためか? いやまことではないはずだ。きっとサタンだ!! 俺は悪魔になる運命だったのか?)




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