受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 「あれっ、これ眞樹んだ。どうしてこれが?」

そのシールは確かに眞樹が、死んだ愛犬にソックリだと言って買っていた物だった。


(そうだ、確か待ち合わせしたコンビニにあったやつだ。彼奴その場で貼っていたな。でも何故、この携帯が俺の鞄の中に?)

出来の悪い頭で考えた。
でも思い当たらない。

仕方ないので学校に連絡した。

でも急に学校閉鎖になったせいで要領を得ない。

俺は電話口で、ずっと待たされる結果となった。


やっと知らされたのは。
眞樹が昨日休み時間中に高熱を出し、親が迎えに来て入院したとのことだった。


(バックレたんじゃなかったのか?)

俺は事務員の話を聞きながら、眞樹に心の中で謝っていた。





 (親が間違えて持って帰ったのか?)

授業中にゲームなど遣らなくする目的で、教室には名前付きの携帯電話掛けがあった。


(俺だって持ったばかりの頃は嬉しくて、隠れて眞樹にメールしてたもんな)

頭の中にはその頃遣っていたゲームがよみがえっていた。

今と同じようにシューティングゲームばかり遣っていたと感じた。


(まあ俺は抜きとしても、高校三年生ともなるとクラスメートほぼ全員が所持してたな。そりゃ、塾とか予備校とかで進学組みは忙しいからな。でもよ。名前付きとは何なんだ? まるでガキ扱いだ! って誰かが言っていたな。それでも結局みんなが従っていた。でもそのせっかくの名前付きが、今回ばかりは役立たずだったな)

そっと携帯を見てみる。でもそれには望月眞樹の名前はなかった。


(これじゃ判らないわ。眞樹の親はパニクったんだろう? そうだ。だから教室の後ろの携帯掛けに、これだけ残っていたんだ。だよな? 日直で遅れた俺は気にもしないで鞄に入れた。だから、この携帯が此処にあるんだ)

俺は自分なりに、携帯の入れ替わったことの答えを導き出した。



 やっと探し当てた結果に満足しながら、俺は携帯のカバーをスライドさせた。


(ん?)

携帯画面に違和感がある。

俺は直ぐスライドさせ、携帯を閉じた。


(当たり前か。俺んじゃなかったんだもんな)

俺は携帯画面にうっすら写る照れ笑いを右の掌で覆った。


(眞樹……ごめんな……俺さ……どうしてもゲームが遣りたいんだよ……許してくれよ……
眞樹……)


俺は言い訳を繰り返しながら……
眞樹の携帯を再び左手に取った。


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