受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 (んな馬鹿な? 俺が救世主だったなんて……信じられるはずがないじゃないか。第一……俺は結婚してる。救世主がそんなんで良いのか?)

でも一馬はマジだった。


「証拠はあるのか?
だったら見せてみろよ。第一、俺が救世主だったなんて信じられる訳ないだろう!?」
俺はまだそんなことを言っていた。


「俺はヴァンパイアかも知れないんだ」
俺は泣いていた。
ヴァンパイアの血がまことを殺したと思っていたからだった。

「それはきっと眞樹の執念が君に乗り移ったのではないのかな?」


「執念?」
俺は聞いた。


「眞樹は、成績でトップになることを目指していた。でも本当は君に敵わないことが解っていたんだ」


「だから俺を憎んだ?」


「そうかも知れないし、違うかも知れない」
一馬は煮えきれなかった。


「それで良く救世主だなんて言えるね。証拠もないくせに」

本当は大天使ガブリエルだと知りながら、失礼なことばかり言っていた。


解ってるんだよ。
言葉遣いが悪いことぐらい。
でも俺は本当に何が何だか判らないんだ。




 「証拠? 私にはこれ位しか……」
一馬……
いや、大天使ガブリエルはそう言うと、俺をさっきまで二人でいたカンバスに連れて行った。


「えっ!?」
それを見せられて、俺は思わず息を飲んだ。

其処には、大天使ミカエルの剣で脇腹を刺された俺が描かれていた。
それも、大きな十字架を背負わされて。




 俺は慌てて、手を見た。
其処には釘痕がはっきり付いていた。
それは両方の手と足にも存在した。

俺は確かに救世主の生まれ変わりだったのだ。
そう言わざるを得ない。


輪廻転生。
それらを幾度も繰り返して、今俺に降臨したのだった。


十字架に貼り付けにされて殺されても尚生き返ったとされるイエス。
誰かが、聖母マリアを天使が犯して出来た子供だから不老不死の力を得たためだと言っていた。


「私は眞樹が第二の救世主だと思っていた。だから、いやそれだけでもなく愛していた。でも、サタンに変えられてしまった」
一馬は辛そうに話した。


(サタン? 悪魔のことか?)
でも本当のサタンは違っていた。
堕天使だったのだ。


堕天使とは、堕落した天使のことだった。


サタンとは天使界を追放されて人間界に送り込まれた堕天使だったのだ。




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