受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 「望月一馬主席の話しによると、俺はどうやら救世主らしい。でも……、実感もなければ実行中もない。だから試行錯誤しているんだ」


「いや、絶対にアンタは救世主だ。あんな教育ソフト、誰にも考えられない……」


「そうだよな。世界の子供達を貧困から救い出せるのはきっと知識なんだと俺は思っている」
松本君が力説した。


「そのために、是非君達の力を貸してほしいんだ」
俺は彼等に握手を求めながら言った。


「子供達が自国語をマスターすれば、親にも教えられる。少しだけど、そんな手伝いが出来ればいいと思っているんだ。だから協力してくれ!」

俺は力説していた。


「有事対策頭脳集団は既にオカルト教団なんかじゃないですよ」
彼も力強く言った。
松本君も隣で頷いていた。


「すいません俺、次期主席のこと何も知らなくて。ただ騒ぎを起こせば又オカルト教団とか叩かれると思って……」


「解ってたよ。だからこそ、此処で手伝ってほしかったんだ」
俺は力説した。


俺の意思を彼は解ってくれて、手始めにソーラー充電付き携帯電話の開発を約束してくれた。


「既に電卓では実用されている。後はそれを充電池に貯める技術力だな」


「携帯カバーに上手く嵌め込めれば勝算ありです」
そう言った彼は何処か誇らしげだった。


 「そうなると……、電源の差し込み口が要らなくなるから、完全防水出来ますね」


「完全防水!?」
考えてもいなかったことだった。
俺は彼の一言に感動して泣いていた。


何故だか解らない。涙が自然に溢れてくるんだ。
後から後からこぼれてくるんだ。


もしかしたら俺は、掛け代えのない人と出会ったのかも知れない。


「やめてください、次期主席。まるで俺が泣かせたみたいで……」


「解ったか? 若林喬って男はそう言うヤツだ。ハートが暖かいんだ。ずっと孤独に生きてきたから、人の痛みが解るんだよ」
松本君はそう言いながら泣いていた。



「この携帯ソフトは絶対に完成させたいんだ。フェアトレードを成功させるためにも」


「えっ、そのフェアトレードって何ですか?」


「俺が説明してやるよ。フェアトレードってのは、対価トレードとも言って、貧困に喘ぐ地方の作品を通常価格で買うことだよ」


そうだ。
俺はそのために、有事対策頭脳集団にいるんだ。




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