受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 『ねえ』


(キター!!)

心も体もカッカと燃える。

まるで最新型インフルエンザにでも感染したかのように、全身全霊で宇都宮まことの言葉を待ちわびた。


『あなた誰?』


いきなり全身から血の気が引いた。

気が付くと、現実にいた。


『俺は眞樹だよ忘れたのまことちゃん』

必死に眞樹になりきろうとした。


『眞樹だったら、赤坂奈津美ちゃんがお相手の筈よ』


(やっぱりだ)

その返事を見て、そう思った。


(眞樹のヤツ年をごまかしたな?)

その瞬間。
今自分が手にしている携帯は、間違いなく眞樹の私物だと確信した。


(眞樹がOKなら自分でもいい筈だ。だって俺達は同じ誕生日じゃないか!)

何故だか開き直った。

俺は、メロメロにさせられた宇都宮まことを離したくなかった。

俺は心の片隅に残っていた、一欠片の恋愛拒否行動さえも既に封印していた。

俺は完全に宇都宮まこと一色に染まって、萌まくっていた。




 『実は俺、眞樹の友人の喬。携帯が入れ替わった』

俺は到頭告白していた。

無言な時間が流れる。

たまらなくイヤな居心地。

俺はそわそわしながら、宇都宮まことが太ももを触った手を思い出していた。

何故だかゾクッとした。

太ももに違和感がある。

宇都宮まことが此処に居たような、本当に触られたような感触がある。

俺は心を落ち着かせる為に静かに目を閉じた。


目を開けると又屋上にいた。

俺は恐怖の余りに座り込んでいた。




 『エラーが発生しました』

携帯の画面上に大きく書かれた文字。

俺は急にいたたまれなくなって、スイッチを入れたままカバーを又スライドさせた。

でも勝手に開く。
又閉じる。
又開く。

その繰り返しだった。
宇都宮まことがやらせている訳ではない。
俺は分かっていた。
宇都宮まこと逢いたさに、手が反応している事を。

俺はきっと、宇都宮まことに逢いたくて此処に来たのだろう。

俺には時々こういうことがある。

急に寂しくなって、意識だけが母を求めてさまよったこともあった。

幽体離脱。夢遊病。
誰にも言えず俺は苦しんでいた。




< 22 / 147 >

この作品をシェア

pagetop