受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 宇都宮まことのこととなると冷静で居られなくなる。

俺はそれほどまでに宇都宮まことの魅力に堕ちていたのだ。


「さっきから言ってるだろ!! その手で触るな」
俺はいきり立った。


「彼女がニューハーフかも知れないと思っていた。でも気付いたんだ。あのリアルな男性の声はお前だと。それに、俺が童貞だと話したのはお前だけだ。違うか? 眞樹」


俺は屋上から堕ちる瞬間に、宇都宮まことが本当は女の子だと確信することが出来たのだった。


目を綴じると浮かび上がる宇都宮まことのボディ。
この掌にまだその感覚はのこっていた。




 その時、俺の母親が病室に入って来た。

誰かが連絡してくれたのだろうか?


(一体誰だろう? こんなカッコ悪いトコ見せたくないけど……でも嬉しい……)
俺の脳裏に、今朝の出来事がよぎる。


施錠された母の部屋を羨ましく見ていた自分を思い出した。



「あらっ坊ちゃま。お見えになられていらしたんですか?」

でも母は思いがけないことを言う。


(えっ!? 何故だ!? 何故母は眞樹を知ってる?)


「驚いたか? この人はお前の母親なんかじゃない。俺の崇拝者。そして俺達の代理母だ」
眞樹は俺に向かって、勝ち誇ったように言った。


でも母は困惑しているようだった。


思わず口から突いて出た、坊ちゃま。


これが何を意味しているのか。


出来の悪い俺の頭でも解った。

母の仕事先が望月眞樹の家だったってことだ。

でもそれだけの関係だけでもなさそうだった。




 「俺達は……親父の実験材料だった」
眞樹は一瞬声を詰まらせたが、次第に俺達の全ての関わりを包み隠さず話し出した。


相当の覚悟がいることなのだと思い、俺は自然に身構えた。


父は天才科学者として有名な氷室博士(ひむろひろし)教授。

母は天才芸術家の小松成実(こまつなみ)。

名前位なら知っている。

でもそんな有名人が本当の両親だと聞かされても、俄かには信じられない。

俺はゆっくり眞樹に目をやった。

眞樹は真っ直ぐに俺だけを見ていた。

それだけで、眞樹の言っている事が真実なのだと悟った。




 (俺達、と言う事は……俺と眞樹の事か?)




< 33 / 147 >

この作品をシェア

pagetop