受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 でも……
博士が興味を持ったのはオサムシだった。


そう……
元々博士はオサムシに親しみを感じていたのだった。


首長族のオサムシ。
餌はミミズやカタツムリだった。


真っ黒い少し不気味なオサムシを、博士は追い掛け廻した。


思い込んだら一直線。
そして……
やっとの思いで、一匹捕まえることが出来たのだった。


でも……
成美はそれをすぐに逃がしてしまったのだ。

でもそれはオサムシが嫌いと言う理由ではなかった。




 その時成美は言った。


『こんな小さな虫にだって、生きる権利はあるのよ。研究の為とか言って標本にするのだけは辞めてほしいの』

成美はただ昆虫採集の標本が怖かったのだ。


でも、何気なく言った一言が、博士の心に届く。


博士はこの後、昆虫を観察したり、写真撮影する事だけにしたのだ。


誰より念入りに調べ、ベストの状態での撮影。


その幼稚園児らしからぬ行為が、天才科学教授へと導いてくれたのだった。


そう……
全て、成美の一言から始まったことだったのだ。




 でも博士はそれだけで留まらなかった。
自然科学だけでなく、物理にも興味を持つようになったのだった。
天体部門にも目を向けた。


父親の望み通り、博士は知識をドンドン吸収していく。

そして国立大学へと進んで行ったのだった。


その時……
後に眞樹の養父となる望月一馬(もちづきかずま)と出会ったのだった。




 望月一馬は日本の未来を考えていた。


有事対策の無い日本。


このままではいけない。


そう思い立ち、頭脳集団を作り上げようとしていた。


でもその有事を理解してくれる人は皆無だった。


一馬は北佐久郡望月町で拾われた捨て子だった。


後に佐久市となるこの地域は宇宙開発基地に力を入れていたのだ。

そんな影響を受けた友人達は、宇宙論を繰り返していたのだった。


だから自然と興味は宇宙に向かっていった。


そして、一馬はみんなから宇宙人と呼ばれるようになる。
人並み外れた頭脳の持ち主だったからだ。


有事対策頭脳集団を設立した当初は、異星人の襲来を想定した所謂オカルト教壇だと思われていた。


でも一馬の真意は違っていたようだ。




< 36 / 147 >

この作品をシェア

pagetop