受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 「その施設では育てて貰えなくて、乳児院に行ったらしいの。私はその後転々として、最後に辿り着いた施設で望月一馬さんの出会ったの」


「望月一馬? もしかして眞樹の……?」

母は頷いた。


「一馬さん良く言っていたわ。私達孤児は宇宙人なんだって」


「宇宙人!?」

俺は驚きの声を上げながらも、眞樹の父親ならそれ位の事は言うだろうとも思っていた。


「一馬さんの考えでは、孤児……。つまり、親に棄てられたら子供はみんな宇宙人なんだって。だって名前も住所もこの地球上には存在していないからだって」

俺は、泣いていた。

眞樹の父親にも産んでくれた親はいるだろう。

本当は……
会いたくて仕方なかったのではないだろうか?
そう思いながら。




 「この地球上には、もう大勢の宇宙人が来ているそうよ。ガリバー旅行記を書いたスイフト。それから、かぐや姫……、みんなみんな、宇宙人だって」

母はそう言いながら、俺の背中に当てておいたタオルを外した。


「スイフト? うん、そうだね。あの世界観は、確かに宇宙人っぽい」
俺は小人や巨人、飛び島や馬の国などの挿し絵を頭に描いていた。


(確か日本にも来たんだよな?)

俺は望月一馬と言う、眞樹の育ての親の言葉が少しだけ解ったような気にきなっていた。


俺はゆっくり目を開けた。


その時、再び母の胸が俺に迫っていた。




 「少しずつ体をズラせば床擦れは出来づらくなるからね。痛いと思うけど我慢してね」


俺の目の前に……
幸運が迫る。

俺は思い切って、母の胸に顔を近付けた。


その時……
母は俺の背中に手を入れて抱き寄せてくれた。


(ありがとう母さん。ありがとう!!)


「あっ……、う、うーー」

夢が叶ったせいか……
俺は不覚にも、嗚咽を漏らしていた。


あの白い夢の中で……
何度もさまよい求め続けていた母の胸が、今俺の顔を覆った。


「やはりまだ赤ちゃん?」

母の笑い声が聞こえる。

嬉しくて嬉しくて堪らなくなる。


「当たり前だよ。俺はずーっと、ママの赤ちゃんだ」

思い切って言ってみた。

俺の声は震えていた。

泣き声と……
母の胸に当たる唇で……


母の表情は解らない。でも泣いているように思えた。

俺の首筋に冷たくて暖かいモノが当たる。
母の涙だった……




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