受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 目の前に教会があった。
真実は誘われるままその教会に入った。


祭壇の前で跪き、必死に許しを請う真実の姿が其処にはあった。


若林結子は真実の横に跪いた。


結子は真実の履き捨てた靴を見つけて後を追ったのだった。


第二のキリストを宿した母体は、本来なら安静にしていなくてはならない。

でも若葉結子は佐伯真実の後を追った。

それが何を意味しているのかも真実は知らずに、ただ結子を守り抜く事だけを神前で誓おうとしていた。




 「それほどまでに、氷室教授を愛しているのか?」

真実の言葉に結子は頷いた。


「彼のためだったら、どんな苦労も厭わない。それに、私は望月代表に出会って救われた。だから二人が望むことを遣りたいだけなの」

でもそれは嘘だった。

結子が本当に愛していたのは真実だったのだ。

それでも結子は第二のマリアとなる決心を力強く宣言したのだった。




 第二のマリアの中で、次世代の救世主となるべき人物は既に産声を上げていたのだった。


「これから辛い試練がきっと待っている。俺が守る。君を絶対に守り抜く!!」

神の御前に跪き、自ら犯した罪を告白しながら……
真実は献身を愛する結子に誓った。




 それが……
俺が母と居られる訳だった。

幾ら父が俺と母が一緒に暮らす事を望んでも、教団の幹部の了解無しでは成り立たない話だったのだ。





双子は、かっての計画通りに引き離された。


眞樹は何も知らない望月一馬の元へと引き取られた。


そして俺は、佐伯真実の子供として届けがなされた。

その子を若林結子の養子と言う形をとって、施設内で暮らす事にしてくれたのだった。


そう……
あの白い部屋のある施設。

それこそが、有事対策頭脳集団の所有する建物だったのだ。


その事実を俺は後で知る事になる。

あの施錠された部屋の実態を……
この目で確認したその時に……


超未熟児用保育器から普通の保育器へ……

宇都宮まことは日々成長していた。


そして実態が真実から語られた。


教団の未来を願って出掛けた宇都宮で起こした事故。

自殺した母親の体内から胎児を取り上げて育てていた事などを詳細に。


そして……
養護施設で育ててほしいと願い出たのだった。


勿論、その意見は全員の賛成をもって受け入れられたのだった。


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