受胎告知Fake of fate【ｱﾝﾋﾞｴﾝｽ ｴﾌｪｸﾄ第二のマリア】

　だから心配したまことが様子を見に来てくれたんだと思ったんだ。

でもまことは首を降っている。


「何だか眠れなくて」

俺はまことのその言葉を待っていたかのような震えを体に覚えた。


俺は車椅子に移動しようと思い傷む手を伸ばした。

骨折した腕にはプレートが埋め込まれている。
ギブスで固定するより回復が早くなるそうだ。


別にこれと言って遣ることもないのだから、のんびり治しても良いのだが……




　『喬落ちて』
その言葉を書き込んだまこと。
俺はまことと別世界に逃げ出したくてそれを利用した。

だから、悪いのはまことではないのだ。
でもまことはそれすらも負担に思っているようだった。


眞樹の作ったゲームに参加したから、俺が堕ちたのだと信じてしまったのだ。
でもまことはゲームに参加する道しか無かったはずなのだ。

まことは眞樹の遊び相手で、いくら佐伯真実が後見人だったとしても、肩身の狭い思いをしていたはずなのだから。


そう……
全ては眞樹が悪い。
責任を転換しようとは思わない。
眞樹に敵意を与えた俺も悪いのだから……


そんなことを考え……
まだ回復していない指先を庇いながら必死に車椅子に乗り込んだ。

俺の真意をまことに伝えたい。
それだけのために……




　（あのアンビエンス　エフェクトは、眞樹の腕試しの目的で開発されたゲームに違いない）

俺は病院の集中治療室でそう感じた。

恋を知らない俺に恋愛シミュレーションゲームをさせて夢中にさせるために……

アンビエンス・エフェクトを作った。


そして……


『喬落ちて』

その書き込みを見て、俺が屋上から飛び降りることを期待していたのだ。


俺が高所恐怖症だと知っていながら試したのだ。

その結果がこれなのだ。
今の俺と宇都宮まことなのだ。

でも解らない？
俺がもし眞樹の恋人かも知れない、赤坂奈津美を選んでいたら……

眞樹は果たして墜としただろうか？

あの白い部屋に連れて来ただろうか？

そう考えながら、俺は頭を振った。
俺は学校の屋上から墜ちたはずだったのに、眞樹の言葉を信用してる自分に気付いて……


俺はあれこれと妄想しながらまことの病室を目指そうと車椅子を移動させた。