受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 俺だってキスしたい。
それ以上のこともしたい。
チェリーボーイも卒業したい。

でも恥ずかしくて、何も出来なかった。


結局俺はさっきまで繋いでいた手さえ握れずに、ただ其処に座り込んでいた。

そっと手を見る。
未だに消えない宇都宮まことの胸の膨らみ。
その記憶に俺は疼いていた。

抑えが効かなくなるほど萌え上がり、身体の芯まで煮えたぎっていた。




 やっと歩き出した二人の前に、看護師に教えて貰った小さな教会が現れた。


俺は祭壇の前にひれ伏した。
そして罪を告白した。


戸籍上では姉かも知れない人愛したことを。




「天にまします、我等の神よ……」
宇都宮まことは神の御前に跪いた。


「願わくは御名をあがめさせたまえ。
み国を来たらさせたまえ。
御心の天なるごとく、
地にもなせたまえ。
我らの日ようの糧を今日も与えたまえ。
我らに罪をおかす者を、
我らが許すごとく、
我らを許したまえ。
我らを心みあわせず、
悪より救い出したまえ。

国と力と栄とは、
限りなくなんじもものなればなり。
アーメン」

宇都宮まことは俺の罪を請うために、神に祈りを捧げてくれたのだった。




 「主よ……
いま御前に立つ。
まことと愛を分け合うため。
主よ……
いま二人を一つとなし、
まこととしたまえこの誓いを……
喜び悲しみ生きる限り。
主よ……
この二人を祝したまえ。
愛する二人に溢れる喜び。
造られた神をたたえて歌おう。
互いに信じる心を実らせ、
主の愛求めて正義に生きよう。
試練の嵐に出会ったときこそ、
互いに受け入れ、
心を開こう。
互いに引き裂く痛みの中でも、
よみがえる愛を信じて祈ろう。
ひとつのパンを分け合う二人は、
心をあげつつ、
主の愛歌おう」


それは……
神に……
主に捧げた結婚の誓いだった。




 「いいのか? 俺で?」

俺の言葉に頷く宇都宮まこと。


「あなた……、喬じゃないと駄目なの」

宇都宮まことは恥ずかしそうに俯いた。
そして……
その顔を少しだけ上げて、上目遣いで俺を見た。


――ドキッ!!

俺の動悸が激しくなる。


俺は思わず指を組んだ。

俺は、動かせないはずの指を組んでいた。


でも俺は気付いていなかった。


「喬……指」

宇都宮まことはそう言ったまま固まった。




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