受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 「指が……指が動いてる!!」
俺は喜びの声を上げた。


泣き声がする。
俺はその中で、何度も掌に指を近付けた。


俺は、やっと動いた指先を宇都宮まことの顎の下へと運び、少し持ち上げ唇を重ねた。


宇都宮まことの唇は柔らくて、ずっとこのままでいたい衝動にかられていた。

さっきあの公園のベンチで、頬を真っ赤に染めたまことに萌えた。
その記憶が俺を突き動かす。
俺はもっと激しいキスをしたくなった。

でも此処は祭壇の……
神の御前だった。

それでも身体が疼く。
必死に抑える俺にまことが首を傾げた。


「あぁ、早く結婚してぇ」
俺は素直な気持ちを言葉にしていた。




 でも俺はまだ十七歳。
結婚出来る年齢ではなかった。


俺の誕生日は十二月二十五日。
そう……
イエス・キリストの誕生日とされる日だった。


勿論。
聖書にも書いてはいない。

でも、望月一馬はこの日にこだわった。


徹底的に儀式を意識した結果だった。


本当の母の通り魔事件から始まった神をも恐れぬ行為は、全てその日に俺と眞樹を誕生させるためだけに決めていたのだった。


きっと、多少前後してもその日になるように帝王切開にしたのだった。

排卵を遅らせることが出来るなら、出産を抑制させる薬があってもおかしくない。
俺はそう思った。




 「それはきっと神の御加護かも知れない。喬君は神様に守られている」

宇都宮まことはそう言った。


でも俺には宇都宮まことの言葉が解らなかった。


「クリスマスよ。クリスマス。こんな日に産まれて来られるなんて、主席も粋な計らいするわね」


「首席!?」

俺は教育現場の首席だと勘違いしていた。
塾やフリースクールの経営者に相応しいと思っていた。

でも……
尋ねてみることにした。


「もしかしたら、首の首席じゃなくて、主の主席?」


「そう望月主席」

俺はその一言で思い出していた。


宇都宮まことが、有事対策集団の一員だと言うことを。


でも主席は……
国家主席のようにトップの中のトップじゃないか?


俺は自分を主席だと名乗る望月一馬はやはりオカルト教団のトップらしいと思った。


主席や主宰、総裁。
その教団によって独特の指導者の肩書きかある。
俺も俺なりに調べてはいたんたけと。

主席とは驚いた。



< 73 / 147 >

この作品をシェア

pagetop