受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 (どうせ殺さるなら、先に死にたい……彼女の死を見届けてからなんてイヤだ!! でも……せめて死ぬ時位は一緒で……二人同時に死にたい!!)


俺は最後の力を振り絞って、宇都宮まことの体を抱き締めた。

でも俺と宇都宮まことの体は其奴等の手によって引き離され、ベッドの上へと移動させられた。


(えっ!?)

俺は恐る恐る目を開けた。


その目に飛び込んで来たのは、さっきまで宇都宮まことを追い掛けていた幹部候補生達が身柄を拘束された姿だった。


俺達は助かったのだ。




 佐伯真実は警察官に、五人の身柄を拘束させた。

新聞のトップ記事になる事は覚悟したようだった。

佐伯真実とはそれほど器の大きな人だった。




 《やはりオカルト教団だった》


翌日。
暴走した幹部候補生の逮捕記事が出た。


でも一面ではなかった。

その事件に端を発する、製薬会社の社員の逮捕記事だった。




 暴走した若い幹部候補生達は、全員が養護施設の出身者だった。
五人は眞樹を好ましく思っていなかったのだ。

突然連れて来られた赤ん坊が、教団のトップになると言われたからだった。

誰でも上になれる。
主席の望月一馬がそうだったように、自分達も又……

そう思い、そう信じて生きてきたのだった。

虐めや脅しにも屈折ずに。


そんな時に舞い込んだ儲け話。

それは製薬会社に就職した同士の口ききだった。


どうせ何を遣ってもオカルト教団と罵られる。

だったら眞樹の引き継ぐ有事対策頭脳集団を本物のオカルト教団にしてやる。


それが狙いだったのだ。




 監督不行き届きと言うことで、教団トップの望月一馬と佐伯真実も事情を聞かれた。


一馬から依頼を受けて、細菌兵器を作ったとされる氷室博士教授も同様だった。


でもすぐに三人は釈放された。


博士は自然界にあるあらゆる菌を増殖させただけだったのだ。


それはある映画を見て、一馬が決めたことだった。

宇宙人が攻めて来た時、宇宙にないウイルスが勝利の一因になったと言う。
あの映画にヒントを得たがらだった。


カビなどから採取した菌を培養しても罪には当たらないからだった。




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