受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 病院で子宮癌だと診断された時、小松成美はやっぱりと思ったそうだ。

彼女は自分の異常に気付いていた。
子宮筋腫だと勝手に思い込んでいたのだった。


自分にはもう子供は出来ないと思い、手術しようと考えていたのだった。


だから……
形はどうであれ、俺の存在自体が嬉しかったんだ。


『丁度体外受精卵による代理出産の実験をしたいと思っていたところだった』


(医学博士の佐伯真実がそう言ったのは、小松成実の思いと氷室博士教授の野心を叶えるためだったのかも知れない。もしかしたら父はそれを知って、どうして子供が欲しくなったなかな? 愛する人の子宮が無くなる前に……だから小松成実二世をどうしても作りたかったんだ。俺を作り上げたかったんだ)

俺は俺達が産まれて来た経緯を美化しようとしていた。


俺はいつの間にか父の犯罪行為を正当化しようとしていた。


そして、それが全てだと思うようになっていた。




 父と母と母の旦那は同級生で幼なじみだった。

母は小さい頃から天才と呼ばれて、もてはやされていたらしかった。


そんな母に二人とも恋心を抱いた。


野心家の父は母に相応しい人間になろうと、天才科学者の異名を持つまでとなった。


でも母はそんなものを望んではいなかった。


人間らしい、優しい愛。


ただそれだけが欲しかったのだ。


名声より愛を選んだ母。


それでも母に執着した父。


母を愛する余り、見えなくなっていた友情。


それが母から女性機能を奪うきっかけになっていったのだった。



母の話を聞いて俺も母のように生きたいと思った。

愛する人のために。
愛する人と共に。


俺の愛する人……

宇都宮まこととこれからも歩み続けたいと思った。




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