ほんとの笑顔が見たかったんだ
「じゅなちゃん、ソラの絶叫してる顔、俺の分まで見ておいてね!」

列に並び、やっと乗り場にたどり着いた時、俺とじゅなの後ろに乗り込む時、龍星はじゅなに笑顔で言う。

じゅなも

「分かった!ばっちり見とくね!」

と、笑顔を返す。

「バカ。そんな余裕ねぇだろ?」

「なんとしてでも絶対見てやるからねー!」

「うるせー」

そんなやり取りをしているうちに、コースターは動き出した。

出発してゆっくり小さなカーブを曲がった後、ガタガタと独特な音を出しながら坂を登り始める。

段々高くなっていって、夕方の夏の風が心地いい。

「ねぇソラ」

ぼーっと周りを見ていると、小さな声でじゅなは話しかけてきた。

「ん?」

耳をじゅなの方に傾けると、じゅなは照れくさそうに優しく笑った。

「今日はありがとう。龍星君の隣にいっぱいいさせてくれてありがとう。龍星君もすごく楽しそうで良かった」

“ありがとう”

の言葉は素直に嬉しい。

じゅなが喜んでくれたのは嬉しい。

でもさ…やっぱ結構キツいな。

だって…結局龍星だもんな…。

でも、そんなん承知の上だ。

「お礼とか良いし。俺も超楽しかったから良かったよ」

いつもの感じ、出せてんのか分かんねぇけど…精一杯笑った。

コースターが頂上にたどり着き、その後一気に急降下した。

もちろんお互い顔を見る余裕なんてなくて、乗ってる間だけはちょっと辛いのは忘れる事が出来た。

< 110 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop