ほんとの笑顔が見たかったんだ
帰りの車内では、朝と同じように龍星は窓側に座った。

俺も朝と同じ席だとすれば…真ん中なんだけど…。

「じゅな、真ん中乗れば?」

じゅなが喜ぶ事ってやっぱ龍星の隣にいる事だよな…。

そう思うと、俺の口からは勝手にそんな言葉が出てしまっていた。

「え…う、うん」

じゅなはちょっと恥ずかしそうにしながら、龍星の隣に座った。

オトンは俺の方をチラッと見たような気がするけど、俺はあえて目を合わせなかった。

俺は自分の気持ちも大切にしたい。

それはほんとに今日心からそう思った。

でも、じゅなの邪魔もやっぱりしたくなくて…。

ほんと、難しい…。

窓の外を見ると、もういつの間にか暗くなっている。

「楽しかったね…ほんと良かったなー」

龍星が端の席で小さくつぶやいた。

「うん。楽しかったね」

それに反応してじゅなはうなずく。

顔を見合わせて穏やかに笑い合う2人。

2人がこんな風に喜んでくれて、嬉しいのは事実だ。

龍星も、俺らにはまだ分からない何かを抱えているのだろうけど、でも…ほんとに今日は楽しんでくれたと思うし良かった。

だけど、笑い合う2人を横目に見ると、やっぱりちょっと辛くなる。

2人にはずっと笑ってて欲しいって思うのに…俺って欲張りなのかな…分かんねぇ
…。

色々考えているうちに、いつものようにすぐに眠くなってきて、気づくと眠りに落ちていた。
< 111 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop