ほんとの笑顔が見たかったんだ
「ソラ、今日さ、最後の最後にじゅなちゃん誘ったじゃん?ツンデレ感凄かったけど、ソラかっこよかったよ!」

隣で横になっている龍星が嬉しそうに話しかけてきた。

もう電気を消しているからどんな表情してんのか分かんねぇけど。

「恥ずかしい話出してくんなよ…つか、ツンデレ感ってなんだよ…」

天井を見ながら、俺は返した。

「や、これは冗談抜きで、男前だと思ったから!」

「うっせー。もう俺寝るからな」

「ソラってほんと照れ屋だよなー!おやすみ!」

龍星はそう言ったから、もう何も喋んねぇと思って目を閉じると、龍星は再度口を開いた。

「なぁソラ?」

ぼそっと呟くような声がシンとする部屋ではハッキリと聞こえる。

「ん?」

俺は目を閉じながら返事をした。

「…ほんっとにありがとう。」

「なんだよ急に」

「いや、マジで。だって…さ…去年までさ、もう楽しい日なんて一生来ないって思ってたし!」

わざと明るく言うと、

「だから、マジでありがとな。じゃ、おやすみ」

そうして、それ以降は話す事はなかった。

すぐに龍星はスヤスヤと寝息をたて始めた。

そんな龍星とは対照的で、俺はなかなか眠れなくなった。

遊園地の帰りに爆睡してたからってのもあるけど…龍星の言葉が頭に焼き付いて眠れねぇ。

“楽しい日なんて一生来ないと思ってた”

って…。

龍星が今までどんな風に生きてきて、なんでそんな風に思うようになってしまったんだよ…。

もうすぐ、夏休みが終わる。

龍星、実家に帰ったら、また辛い思いしないといけねぇのかな…。

なんなのか全然分かんねぇけど、もうこいつが辛い思いするのとかほんと嫌だ。

俺には、マジで何が出来るんだろ…。

体を横に向け、今度はじっと壁の方を見つめた。

そして、再度目を閉じた…。
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