ほんとの笑顔が見たかったんだ
お兄ちゃんは当時大学2回生だった。

下宿していて滅多に家には帰って来なかったけど、帰ってくるとその時から俺に強く当たる事が多かった。

「ハル、そんな奴と喋んな」

「なんでりゅうせいにそんな意地悪するの?りゅうせいは、お兄ちゃんとハルの弟だよ?」

「俺はこんな奴を兄弟とは思えない」

「そんな事言わないでよ!りゅうせいはいい子だよ!」

お兄ちゃんに冷たい言葉をぶつけられる俺を、いつもハルはそんな風にかばってくれていた。

俺は、それをただ黙って聞く事しか出来ないでいた。

俺はお父さんと初めて合った時、

「今は大学の近くに下宿してるんだけど、20歳のお兄ちゃんがいるんだ。凄く妹思いで優しいお兄ちゃんだから、きっと龍星君の事もかわいがってくれるよ」

お父さんはそう言っていた。

今から思うと、お兄ちゃんは大切にしていた妹が急に現れた俺に興味を示し始めて、それに嫉妬してたんだろうな…。

煩わしくて仕方なかったんだろうな…。
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