ほんとの笑顔が見たかったんだ
「じゃあこの間の中間テスト、全教科平均点以上取れたの?」

プリントを見るのをやめ、横になったまま俺の方に体を向けると、ハルはわざと意地悪っぽく笑いながら聞いてくる。

「…そんなの無理だし」

「最高点は?」

「国語の、48点かなー…」

「ちょっと、龍星そんなんじゃ高校行けないよー?」

「やっぱりそう思う?」

「うん…ダメだって!」

すると、今度は急に起き上がって、

「なんか、自分の事より、龍星の事が心配だよー!」

そう言って笑い出した。

俺もそれにつられて笑う。

お互い笑い合って、その流れでなんかほんとにくだらない話とかいっぱいして、気が付いたら進路の話はもう終わっていて、俺達はテレビゲームをした。

「あぁー!もうまた負けたー!」

レースゲームをして、俺が続けて勝つと、ハルは悔しそうに大きな声で言う。

いちいちリアクションが面白い。

「俺、これだけは自信あるからね!」

俺は得意げに言うと、二人で食べていたおかしをつまんだ。

「やだー!私このゲームも龍星に勝ちたい!」

「ガキかよ!」

「ガキだもん!」

コントローラーを握りしめ、ハルは

“今度こそ!”と、意気込む。

それからしばらくゲームを続け、やっとの事でハルは俺に勝った。

凄く達成感があったみたいで、ハルは喜んでそのまま寝転び、うーんと伸びをした。

俺も疲れて隣に寝転んだ。

「あーもうこれもハルに負けちゃったらハルに勝てるもんなんにもないね」

天井を見上げて言うと、ハルは

「私に勝つとか100年早いし!」

と、得意げに言う。

そして…

「ね、龍星!夏休みの事なんだけどさ、二人で花火行こ!」

突然、そんな事を切り出した。

「なんだよ急に!夏休みとかまだ先じゃん!」

「今思い出したの!みんなさ、受験とかで忙しくなりそうだしさ、行こうよね!」

「や、ハルも受験生だろ!まぁ良いけど…お兄ちゃんは?誘わなくて良いの?」

「お兄ちゃんは龍星にひどい事言うから嫌だよ。龍星と一緒がいいもーん」

「ありがとう。じゃ、まぁ一緒に行こっか!」

年上ぶって俺の事からかう時もあれば、やっぱり末っ子歴が11年と長い事もあってか、どこかガキっぽいハル。

でも、俺の事考えてくれて…さりげなく俺の事をかばってくれた。

二人で約束した事。

あの日の事、今でもずっと頭に残っている。

でも…それが果たす事が出来なくなるなんて、思いもしなかった…。
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