ほんとの笑顔が見たかったんだ
お父さんとお母さんがそこにはいた。

暗い表情をしていて、二人とも、目を赤くしている。

泣いていたみたいだ。

そしてハルの姿はない。

「どうしたの?」

今まで二人のこんな顔、見た事がなくてすごく動揺しながら恐る恐る聞くと、お父さんはボソっと言った。

「ハルが…死んだ」

「え?」

言葉の意味が分からなくて、もう一度聞くと、お父さんは今度は急に怒りだし、一瞬の間に俺は後ろに倒れた。

頬には鈍い痛みが走った。

殴られたんだ。

わけもわからないまま、殴られたんだ。

「ハルは…事故で死んだんだ!具合、良くなかったのに…お前に傘を届けようとしてたんだ!届けてる途中で事故に遭った!」

どういう事だよ…事故?

ハルが…死んだ?

胸ぐらを掴まれ、お父さんはもう一回俺を殴った。

俺は何も言い返すことが出来ず、黙ったまま。

すると、お父さんは涙を流しながら怒鳴った。

「なんでハルなんだよ!!…お前が…ハルを殺した…」

そして、お父さんは泣き崩れた。

俺はまだ状況が完全に飲み込めず、その場から動けなくなっていた。

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