ほんとの笑顔が見たかったんだ
「龍星、なんでこっち見ねぇの?」

ソラの方に顔を向けようとしない俺の様子は明らかにおかしかったのか、ソラは後ろからたずねてくる。

「そんなに俺の顔見たいの?ソラちゃん、ずいぶん積極的になったねー」

「うっせー、気持ち悪ぃ事言ってんじゃねぇよ。だってお前超不自然じゃん」

「別に普通だけど?」

「冗談抜きでさ、こっち向けって」

ソラはそう言うと、俺の肩に手を置いてグッと引っ張った。

ほんとは怪我してる俺の顔なんか見せたくなかったけど、でもこれ以上無視なんか出来なくて、苦笑いしながらソラの方を見た。

ソラは一瞬目を丸くして驚いた後、暗い表情を浮かべた。

「前言ってた…兄貴に殴られたの?」

「まぁ…ね」

俺はソラから目を反らした。

ソラは少し考え込んだ後、再び口を開いた。

「あのさ…龍星…今日も俺んち来い。昨日帰ったばっかだけど…俺さ…もうお前がこれ以上傷付くとこ見たくねぇよ。言っとくけど今日についてはお前に拒否権ねぇからな。何がなんでも俺んち連れて帰るから。オカンにも連絡しとくから」

半ば強引だけど、それ程ソラが必死に思ってくれてる事は伝わる。

「ありがとう。でも大丈夫だから。もうこれ以上ソラに迷惑かけたくないしさ」

「だからー…前も言ったけどさ、俺、お前に迷惑かけられた事ないんだけど」

「俺は迷惑かけた事しかないよ?」

「アホか。そんなん俺が迷惑って思ってねぇんだから迷惑じゃねーよ」

こんなにまで言ってくれたから、もう俺は何も言えなくて、ただ黙ってうなずく事しか出来なかった。
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