ほんとの笑顔が見たかったんだ
始業式をあっという間に終えると、特に部活に入っていない俺達は早々と学校を後にした。

結局、またソラの家に戻る事になった。

「そういや、拓海さん…昨日俺が帰った後にまた海外に戻ったんだっけ?」

「うん」

「次はいつ帰ってくんの?」

「多分、年末かなー」

「そっか…さみしいけど、次会うの楽しみだな」

そんな会話をしながら、すっかりお馴染みとなった帰り道を歩く。

昨日…じゅなちゃんが俺に告白してくれた公園を通り過ぎ、そして昨日までいたソラの家。

ソラが玄関のドアを開けると、

「おかえり。ソラ、りゅう君!」

楓さんが優しく出迎えてくれた。

「ただいま…」

照れくさいような、でも少し申しわけないような複雑な気持ちになって、苦笑いしながら言うと、急に楓さんは俺を抱きしめてくれた。

「楓さん?」

「りゅう君…ごめんね…やっぱあたし、昨日帰さなきゃ良かった…こんなになるまで殴られたの?…りゅう君、超良い子なのに…」

楓さんの声は震えている。

必死に言ってくれる楓さんの声を聞いて、俺は泣きそうになった。

ガキみたいだけど、楓さんの言葉に甘えたくなる。

ソラは何も言わず、黙ってその様子を見ている。

楓さんは俺を抱きしめるのをやめ、今度は俺の目を真っ直ぐ目をうるませながら言った。

「前にもりゅう君、怪我してうちの家に帰って来た時あったでしょ?…あえて何があったか聞かなかったけど、内心…りゅう君、なんか抱えてるんじゃないかってずっと気になってた。あの時、ちゃんとりゅう君の話聞いてあげれたら良かったね…ごめんね…。」

「謝らないで…。楓さんがあえて普通に接してくれたから、俺、ここにいる間は笑ってられたんだし」

「…そっか…ねぇりゅう君…何があったか聞かせてくれないかな?」

結局、夏休み中、俺の過去は誰にも話さなかった。

俺、誰かに頼って良いのかな?

聞いてもらって良いのかな?

俺が悪いのに…甘えて良いのかな?

疑問ばかりが頭の中を飛び交う。

わからないけど…でも…

「わかった」

俺は、過去について話すことを決めた。
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