ほんとの笑顔が見たかったんだ
楓さんは“そうだったんだ”と、独り言のように言うと、俺の頭を優しく撫でてくれた。

「辛いのに、話してくれてありがとうね」

そう言って、優しく撫でてくれた。

「ハルちゃん、りゅう君の事、ほんとにほんとに大事に思ってたんだね。」

「うん…いつもなんだかんだで俺の事……気にかけてくれてたよ」

手でサッと涙を拭いた。

ハルとの思い出が浮かんでくる。

ほんとに、ハルは俺の事大事にしてくれてたよな…。

「でも俺のせいで……死んじゃった」

その事だけはどうしても忘れてはいけない事実。

やっぱり答えはそこにたどり着いてしまう。

そんな俺に、楓さんは真っ直ぐ俺の方を見て優しく言ってくれた。

「ハルちゃんは、りゅう君の事、大事に思ってたから、りゅう君に傘、届けようとしてたんだよ?…ほんとに……亡くなった事は辛いし、自分責める気持ちは分かる。でもね……ハルちゃんは、りゅう君が不幸のままでいる事なんて望んでないよ…」

「そう…なのかな…」

「うん。みんなそうであるようにさ、りゅう君にだって幸せに生きていく権利、あるんだよ。りゅう君…前に進も?」

楓さんの言葉が一つ一つ優しく心に響いていく。

もう感情を押し殺す事は無理で、どうしようもなく、涙はこぼれるばかりだ。

ほんとに、生きていきたい。

心からそう思う。

「龍星…今、家族からは存在を否定されたりしているって言ったけどさ…そうだったとしても、お前の事、必要って思ってるヤツもいるんだから。ちゃんとお前はいて良いって思ってるヤツの方信じろや」

涙を流す俺に、ソラもソラなりの言葉で優しく言ってくれた。

まだ後悔はある。

多分これは誰がどう言おうが一生背負っていくんだろうなって思う。

でも、俺、前に進もう。

ハルの分まで、生きていこう。

前向いて、歩いていくんだ。
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