ほんとの笑顔が見たかったんだ
気がつくと私は泣いていた。

ソラが教えてくれた龍星君の過去。

私がお父さんを亡くした、中学二年の時、龍星君も同じように大切な人を亡くして、悲しい日々を送っていたんだ。

私には優しいママがいて、お互い助け合ってここまでこれたけど、龍星君は違った。

お姉さんの死からずっと、孤独に生きてきたんだ。

「そうだったんだね…」

ソラに一通り話を聞き、私は涙を流しながらそう言った。

振られた事への辛さもあるけど、でもそれ以上に龍星君の気持ちを考えると胸が痛むよ。

「うん…。で、龍星なんだけど、来月いっぱいまで俺の家で過ごす事になったんだ。でも、11月からはもういなくなる。龍星さ、自分で生きていくって決めたみたいで、もう実家には帰らないらしい。11月から、オカンの昔からの友達がやってる料理屋で、特別に住み込みで働く事になったんだ」

龍星君は本当にもういなくなる。

さみしいけど、龍星君が前向いて生きていくって決めたなら、やっぱり応援したい。

「分かった…それまで、思い出作らなきゃね」

自然と、私はそう言っていた。

“あとさ…”

と、ソラは電話を切る前に付け足し、

「俺、吹っ切れたつもりでいたけど、やっぱお前の事、諦め切れなかった。俺、諦めないから。これからもずっと好きな自信あるから。じゃ、またな」

そう言って、電話を切った。

…もう、一方的なんだから…。

だけど、こんなに私の事を想い続けてくれる事は、素直に嬉しい。

ありがとう…ソラ。
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