ほんとの笑顔が見たかったんだ
雨はまだ降り続いていた。
「ソラちゃんお先!」
夜ご飯を食べ終え、リビングのソファでテレビを見ながらくつろいでいた時、先に風呂に入っていた龍星が戻ってきた。
「ソラちゃん言うな」
「てかさ、明日から一緒に風呂入んね?」
「気持ち悪い事言ってんじゃねぇよ!」
「冗談だって!」
龍星は、笑っている。
こうやって、いつものように冗談も言っているし。
だけど、俺はそうやって笑う龍星の顔を見ると、どうしても胸が痛む。
相当殴られたみたいで、口や目の回りの内出血がひどいし、顔だけじゃなくて、腕にも殴られたあとがある。
マジで、何があってこうなったんだろう。
龍星の兄貴は、なんでそこまで龍星を憎んでいるんだろう…。
考え出したらキリがないし、気になる。
でも、龍星が話してくれるまで待とうと思う。
「りゅう君!アイス食べよっか!」
自分の寝室にいたはずのオカンが、急にリビングに来て龍星に話しかけた。
いつもバカな事を言っているオカンだけど、オカンもオカンなりに龍星の事を心配しているようだ。
そもそも、龍星に夏休みの間はこっちにいるように一番初めに言ったのは、俺じゃなくてオカンだったもんな。
オカンは俺より先に、龍星が何か抱えてるって気づいていたのかもな。