ほんとの笑顔が見たかったんだ



雨はまだ降り続いていた。

「ソラちゃんお先!」

夜ご飯を食べ終え、リビングのソファでテレビを見ながらくつろいでいた時、先に風呂に入っていた龍星が戻ってきた。

「ソラちゃん言うな」

「てかさ、明日から一緒に風呂入んね?」

「気持ち悪い事言ってんじゃねぇよ!」

「冗談だって!」

龍星は、笑っている。

こうやって、いつものように冗談も言っているし。

だけど、俺はそうやって笑う龍星の顔を見ると、どうしても胸が痛む。

相当殴られたみたいで、口や目の回りの内出血がひどいし、顔だけじゃなくて、腕にも殴られたあとがある。

マジで、何があってこうなったんだろう。

龍星の兄貴は、なんでそこまで龍星を憎んでいるんだろう…。

考え出したらキリがないし、気になる。

でも、龍星が話してくれるまで待とうと思う。

「りゅう君!アイス食べよっか!」

自分の寝室にいたはずのオカンが、急にリビングに来て龍星に話しかけた。

いつもバカな事を言っているオカンだけど、オカンもオカンなりに龍星の事を心配しているようだ。

そもそも、龍星に夏休みの間はこっちにいるように一番初めに言ったのは、俺じゃなくてオカンだったもんな。

オカンは俺より先に、龍星が何か抱えてるって気づいていたのかもな。
< 17 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop