ほんとの笑顔が見たかったんだ


待ち合わせ場所にしたのはあの公園。

どこからか虫の声が聞こえてくる。

夏の夜だ。

公園に着くと、ソラと龍星君は花火を袋から取り出そうとしていたところだった。

「お待たせ!」

二人のもとに駆け寄った。

「じゅな、手伝って。これさ、テープ貼りまくっててなかなか取れねぇ…」

ソラは、懐中電灯片手に、花火をなかなか袋から出せずに苦戦している。

「じゅなちゃん久々だね!」

龍星君はコンビニの袋から置き型花火を出しながら言った。

「龍星君久しぶり!」

私は、ソラが持っていた懐中電灯をソラから受け取って、ソラの手元を照らし、龍星君に笑顔を向けた。

なんとか花火を取り出せた所で、龍星君は自分専用のライターで、ロウソクに火をつけた。

ポッとロウソクに火が灯り、龍星君の顔をオレンジ色にうつした。

「龍星君、どうしたの?!」

龍星君の顔を見た私は、思わずそう言ってしまった。

だって…龍星君…すごい怪我してる。

「ん?何が?」

驚く私とは対照的に、龍星君はいつもみたいに笑って言う。

「顔の怪我だよ…どうしたの?」

「あ、これ?これさ、チャリ乗ってて転んだ時に怪我したんだよねー。恥ずかしいから誰にも言わないでね!」

「そうなんだ…気をつけなきゃダメだよ?」

「うん!」

嘘。

自転車で転んだなんて嘘だよね?

自転車で転んだら、擦り傷になるはずなのに、龍星君の顔や体には擦り傷なんてないよ。

「よし、じゃ、じゅなちゃん!本日一本目、どうぞ!」

龍星君は、一本の手持ち花火を私に渡してくれた。

「ありがとう」

私はそれを受け取り、火をつけた。

ピンクの火の光が、音を立てる。

「きれいだね」

それを見つめながら、ポツリと龍星君は呟くように言った。

優しく、微かに笑顔を浮かべて言った。

龍星君…どうして嘘つくんだろう。

なんでいつも、笑っているんだろう。

ソラと二人きりの時も、こんな風に笑っているのかな?

「うん!きれい!」

龍星君の事が気になってしまう。

そんな気持ちに気付かれたくなくて、私も笑った。

私、ちゃんと笑えてるかな?
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