ほんとの笑顔が見たかったんだ
私は少し、ためらっていた。

だけど…。

「…怪我の事か?」

ソラはもう分かっていた。

私が話したかった事を。

「うん…。自転車で転んだって龍星君は言ってたけど…。私、ほんとは違うと思うんだ」

「…うん」

「ソラは、ほんとの原因知ってるの?」

「それが…俺も……知らねぇんだわ…」

ソラも知らないんだ…。

「そっか…」

シーンと静まり返るソラの部屋。


龍星君は、なんでほんとの事を言わないんだろう…。

あの笑顔の裏にあるのは、どんな感情なんだろう…。

花火の時に見せた、遠くを見るような目は…何を意味していたんだろう…。

そもそも、なんで龍星君はずっとソラの家にいるの?


頭の中に、疑問が次々に浮かんでくる。

考えたって、答えが出ないなんて分かっている。

でも…。

気になる。

気になって気になって…仕方がないくらい。

私だけじゃないと思うんだ。

ソラもきっと、色々考えていると思う。

幼なじみだもん、それくらい分かるよ。


「あのさ…」

沈黙を破ったのはソラだった。

「俺、高校でつるんでるのって龍星だけなんだわ。まぁ、あいつも俺としかつるんでぇけど…。で、毎日一緒にいるわけなんだけど…。俺、龍星の事で知らない事まだまだいっぱいあるんだわ。俺だって…色々すげぇ気になる。だけど、俺はあいつが話してくれるまで待とうって思ってる。」

“待つ”…か。

それが正しいのかは、私には分からない。

でも、ソラは私より龍星君の事をよく知っているわけだし…。

「…うん。」

モヤモヤはするけれど、とりあえず頷いた。
< 26 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop