ほんとの笑顔が見たかったんだ
「てか…龍星、遅くね?」
携帯電話でソラは時間を見た。
私達がソラの部屋に入ってから30分は経っている。
確かに、遅い。
「ほんとだね…」
龍星君、何やってるんだろ…。
「じゅな、そろそろ帰んねぇとおばさん心配するよな…。俺、家まで送るわ。そのついでに公園行くし」
「分かった。ジュース、ありがとう」
そう言って私は立ち上がった。
「じゃ、またな」
「うん!おやすみ」
玄関まで送ってくれたソラに手を振った。
送ってくれたと言っても、大した距離じゃないけれど…。
空を見上げると、黒い空にくっきりと丸い月が光っていた。
『光っているのはほんの少しの時間だけ。落ちたらもう光らないんだ。もう…真っ暗』
龍星君の言ったあの言葉を思い出したのは、月が線香花火の形によく似ていたからなのかな?
やっぱり龍星君の事は頭から離れない。
彼の事を思うと、大きなタメ息がこぼれた。