ほんとの笑顔が見たかったんだ
風月
じゅなに俺は嘘をついた。

龍星の怪我の原因を"知らない"と俺は言った。

でも…ほんとの事なんか言えねぇよ。

あいつは兄貴に殴られた…あいつの兄貴は龍星の事を憎んでいる。

…そんな事、じゅなに言えるわけねぇだろが。

じゅな…龍星の事…すげー心配してたよな…。

じゅなの事だし…今も龍星の事考えてんだろな。

って言うか、あの怪我見たら、誰でも心配するか。




今や龍星の喫煙所になっている公園。

そこを照らしているのは月明かりだけ。

公園のベンチに座っている龍星の後ろ姿を見て少し安心した。

足元に気を付けながら、龍星に近づいた。

だけど…俺はすぐに足を止めた。


龍星の肩が、震えている。

よく聴けば、鼻水をすする音がきこえる。

龍星は泣いていた。

声を押し殺して、誰もいない場所で。
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