ほんとの笑顔が見たかったんだ
「おかえりなさい!二人とも、 遅かったじゃない!」

家に帰ると、ドアの開ける音を聞いたオカンがスリッパをパタパタ鳴らしながら走ってきて、俺と龍星の頭を撫でた。

「やめろ!」

俺はオカンの手を振り払った。

だけどオカンは

「いいじゃん別に!空もりゅう君もかわいいからこうしたくなるの!」

そう言って、また俺の頭を撫でる。

ほんと、バカなオカン。

「ソラー。お前何年楓さんの息子やってんだよ。そろそろ慣れろや」

龍星は平然とした顔でオカンに撫でられている。

「アホか…」

再度オカンの手を振り払い、自分の部屋に向かった。

背後からオカンは、

「この照れ屋さん!」

と言って茶化すから、キッと睨んでやった。

そんな俺を見て、オカンと龍星はクスクス笑っている。



龍星の目を見たら、明らかに泣いた後だって分かる。

オカンも絶対に分かってる。

だけど、あえていつもみたいに接してきたって事は俺には分かった。

16年、オカンの息子やってきてるんだ。

それくらい分かる。



その後、オカンが切ったスイカを食べたり、お笑い番組を観たりして…。

布団に入った頃には、とっくに日付が変わっていた。
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