ほんとの笑顔が見たかったんだ
痛みに耐えながら顔を上げると、持っていた携帯電話とスクールバッグは私の前方に落ちていた。

痛いけどそれ以上に恥ずかしい。

派手に転んだ私を、通行している人がジロジロ見ているからだ。

「す、すみません」

すぐに立ち上がり、携帯電話とスクールバッグを拾い上げ、顔を隠すように下を向きながら走り出した。

同時に鳴る、車掌の笛。

それは、乗る予定の電車が発車したという事を意味していた。

線路沿いのフェンスから、いつも通りの時刻に走っていくそれを、私は立ち止まって呆然と見つめた。

真っ先に浮かんだのはママの顔。

私、ママに無遅刻無欠席で卒業するって宣言してたんだ。

なのに…。

「私のバカ…」

ほんとに大バカ。

【遅刻します…´Д⊂】

グループの掲示板にそう書き込み、トボトボと歩く。

はぁ…やっちゃったよ…。
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