ほんとの笑顔が見たかったんだ
龍星君に手を持ってもらいながら立ち上がると、今更だけど、足にズキンと痛みが走った。

「痛っ…」

思わず、顔を歪めた。

「痛いよね…。鞄持つよ。ゆっくり歩こ」

そんな私に、優しく言ってくれる彼。

「そんな…悪いよ…」

「いいから!」

遠慮するも、彼はもう片方の手を私に差し出した。

お言葉に甘えて、スクールバッグを持ってもらった。

"この鞄、軽っ!"と、笑って言いながら、龍星君はそれを肩にかけた。





見慣れた景色。

だけど、違った景色にさえ感じてしまうのは、私よりも10センチ程背が高い彼が隣にいるからなのかな。

しっかりと、優しく手をにぎってくれているからなのかな。

先程からずっと心臓がドキドキしている。

「大丈夫?」

「うん…」

龍星君は、足が痛んで速く歩けない私と、ちゃんと歩調を合わせてくれる。

どこまでも優しい彼。

容赦なく照りつける太陽。

暑くて、汗が止まらなくて、ベタついてしまう。

でも、不思議と、なんとも思わない。

間違いなくそれは、龍星君のおかげ。
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