ほんとの笑顔が見たかったんだ
「さて、手当てしよっか」

薬箱を開けて、龍星君はさっきみたいに、私の正面に座った。

「大丈夫!私…自分でやる!」

そう言ってはみるが、私は相当怖がっている。

自分でやるの、ほんとは嫌だ。

「俺、自分で言うのも変だけど、傷の手当て上手いから!」

ニッと笑う龍星君。

「じゃ…お願いします…」

その笑顔に安心して、私は龍星君に手当てをしてもらう事にした。

私のためにバンソウコウを買いに行ってくれたし、ずっと手を引いてここまでつれて来てくれたし、おまけにスクールバッグまで持ってくれて…しかもその上、傷の手当てもしてくれるなんて…。

今日は龍星君にお世話になってばっかりだ。

頭が上がらないよ…。


龍星君は、自分で言っていた通り、傷の手当てが上手だ。

素早く消毒してくれて、コンビニで買ってきたバンソウコウもきれいに貼ってくれた。

あっと言う間に、私の傷の手当ては終わった。

「ありがとう…」

「どういたしまして!」

龍星君は、得意げに笑った。

そして、薬箱をソファの前のテーブルに置くと、彼は私の隣に座った。

それと同時に、私の体は勝手にビクリと反応する。

「ソラ、寝てる間に顔に落書きしちゃおっか!」

「ヒゲとか描いたら絶対面白いよね!」

「だよな!でも、そんな事したら俺ら絶対追い出されるよな!」

「間違いないね!」

ソラの寝顔を見て、私達二人はそんな事をコソコソと話した。

ソラが起きないように、クスクスと笑い合った。

出来るだけ、私は自然に笑いたかった。

でも、やっぱり彼が隣にいるとドキドキしてしまう…。
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