ほんとの笑顔が見たかったんだ
昨日の夜、布団に入ってから考えていた事は、龍星君の事だった。

顔の怪我の事や、無理矢理作る笑顔の事…。

ずっと考えていた。

ソラが言ってた“あいつが話してくれるまで待つ”という言葉は、やっぱり疑問だ。

でも、だからって、簡単に踏み込んでいい事には思えないんだよね。

聞きたいけど聞けない…聞くのが怖いっていうのもある。

どうしようどうしよう…って、ずーっと考えていた。

で、考え抜いた末に出た答えは、単純な事だった。

“私に今出来る事をしよう”って。


なのに…今日は助けてもらってばっかりだった。

「龍星君…」

だから、今度こそ、私は龍星君に何かしたい。

「んー?」

私の方を見る龍星君。

緊張するけど、私も龍星君の目をしっかり見て言った。

「私、お礼がしたいんだけど…何したらいいかな?」

すると、龍星君はまた、“ははっ”と笑った。

そして、自分の髪をクシャっとかいた。

「お礼なんていいから!俺は、じゅなちゃんとこんな風に話したり、ソラとバカやったり、楓さんがソラをからかうとこ見てるだけで、幸せだから!」

「え…」

「だから、お礼なんていいよ」

龍星君は、穏やかな表情を私に向け、そう言った。

私はそれ以上何も言えず、小さく“うん”としか、返せなかった。
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