ほんとの笑顔が見たかったんだ
「今日はありがとう」

「いえいえ!じゅなちゃん、勉強の息抜きに、また俺らと遊んでね!俺ら常に暇してるから!」

「うん!また遊ぼ!じゃあね!」

龍星君に手を振って、ソラの家の玄関を出ようとした時、私は昨日の事を思い出して立ち止まった。

それは、花火の後の事。

「龍星君、昨日、公園で何してたの?なかなか帰って来なかったから心配したよー!」

私がたずねると、龍星君はわざと小声で

「ひ、み、つ」

と言った。

「なにそれ!気になる!」

「嘘嘘。ちょっと考え事してただけだよ!心配かけてごめんね!」

小声でコソッという彼がなんだかおかしくて、私は笑った。

“考え事”というのがまた気になったけどね。





自分の家に帰って、すぐに私の部屋に向かった。

そして、力が一気に抜けた感覚になって、ドサッとベッドに倒れこんだ。


頭に浮かぶのは、やっぱり龍星君の事。

繋いだ手…。

彼の優しさ…。

思い出すだけで、私の顔は赤くなる。

彼が隣にいるだけで、ずっとドキドキしていた。

だけど、彼が言った言葉が引っかかる。

私と他愛ない事を話したり、ソラとふざけ合ったり…。

私達との、なんでもない日常を、彼は幸せだと言ってくれた事。

素直に嬉しいと感じたけど…だけど、胸が苦しくなったのも事実で…。

なんとも言いがたい感情になって、私は泣きそうになっていた。



この気持ちはなんだろう。

自分でもよく分からないよ…。

ただ、はっきり言えるのは…。

私の中で、彼の存在はすでに大きいものになっているという事だ。


まだ昼前だというのに、なんだかすごく疲れて、私は眠ってしまった。


【じゅなーどうしたの?今日、休むの?】

ルリカがトークモードでそう聞いてくれていた事に気付いたのは、昼過ぎだった…。

ごめんね、ルリカ。
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