ほんとの笑顔が見たかったんだ
呼び出し音が鳴る。

ルリカ達は龍星君の声が聞きたいのか、私の耳に当てている携帯電話に自分達の耳を出来るだけ近づけ、声をひそめる。

私の心臓の音がバクバクうるさい。

そして…。

「もしもし?じゅなちゃん?」

彼が電話に出た。

周りの三人は、口パクで"出たー!!"と、言う。

「あ、り、龍星君?」

心臓が胸から飛び出ちゃうんじゃないかと思うくらいドキドキする。

「どうしたの?電話かけてくるなんて珍しいね!」

電話の向こうで彼は笑う。

「あ…あの…こ、この間はありがとう!!」

ダメだ私!ちょっと落ち着け!

「いえいえー!傷、治ってきた?」

「うん!ちょっと良くなってきたよ!」

「そっか!良かった!じゅなちゃん今何してんの?」

「え、あ!今、友達と買い物に来てる!!」

「そうなんだ!俺と電話してていいの?」

「う、うん!私、ちょっと疲れたから一人でベンチで休んでるの!」

「そっか!」

私、ちゃんと喋れてるかな?

かなりオドオドしてるかも…。

「うん!」

そこで会話が途切れてしまった。

どうしよう…何話そ…。

目をキョロキョロさせ、三人に助けを求めると、私の正面に座っているナオミが、自分のスケジュール帳に何かを書いた。

それを私に見せる。

"りゅーせーくんはなにしてるの?"

そこにはそう書かれている。

カンペだ!!

「龍星君は何してるの?」

カンペ通りに聞く。

「俺は今、ソラの部屋で宿題してるよ!ソラはさっきまで起きてたけど、今爆睡してる!」

「そうなんだ!」

「俺らバカだから、宿題の答え、ほとんど分かんないんだよね!だからじゅなちゃん、良かったら今度、勉強教えてくんない?」

周りの三人は、ガッツポーズをした。

私は、顔を赤くし、軽くピースをする。

「いいよ!私でいいなら!」

「ありがとう!嬉しいよ!」

「うん!じゃ、友達来たしまたね!」

「うん、またね!」

電話を切ると、私は大きくタメ息をついた。

かなり緊張したよ…。

て言うか…"一人でベンチで休んでる"とか"友達来たしまたね!"とか…嘘つきすぎよね。

龍星君…ごめん。

「疲れた…」

私は机にペタンと顔を伏せた。

私の心臓さん、まだドキドキしてらっしゃいますよ…。

「龍星君、素敵だねー!声も素敵!」

会ったこともない彼を想像しているのか、ノンは少し興奮気味に言う。

「王子様って感じ!もうやばいね!」

だけどナオミの方がもっと興奮している様子。

「ナオミ…カンペありがとう」

そんなナオミにお礼を言った。

「いいよいいよ!それより、じゅな、頑張ったじゃん!」

「うん…頑張った…疲れた」

いや、ほんと疲れたよ。

気力使い果たした気分。

「さて、じゃあ次の計画立てないとね!」

そんな中、ルリカはもうそんな事を言い出す。

だけど…私のためにここまで考えてくれてるって思うと、嬉しいな。
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