ほんとの笑顔が見たかったんだ
「り、龍星君がどうしたの?」

私はすごく動揺した。

慌てた私は、口から出そうになったそうめんをお茶で流し込んだ。

そんな私を見て、ママは軽く笑ったけど、すぐに真面目な表情に切り替えた。

「樹菜の事、助けてくれたし…良い子だとは思うんだけど、あの子と関わるの、やめてほしいの」

私の目を見て、ママは真剣に言った。

私はママの言ったことが瞬時に理解できなかった。

いや…違う。

受け入れることが出来なかったんだ。

「なんで…そんな事言うの?」

とりあえず、いったん箸を置く。

少し間を置いてから、ママは話し始めた。

「最近、近所の人が色々噂してるのよ。あの子は何か問題を起こして、地元にいられなくなって、空君の家に逃げてきたんじゃないかって…。それにあの子、近所の公園でよく煙草吸ってるって聞くし…。ガラ悪いじゃない?もしかしたら良い人のフリをしているだけなのかも知れないよ?だから、もうあの子と関わらないで…樹菜に何かあったら…嫌だわ…」

ママの表情は暗くなっていた。

私の事を心配して言ってくれているっていうのは伝わってくる。

だけど…すごく悔しいよ…。

龍星君の事…そんな風に言われるのが辛いよ…。

「龍星君は優しい人だよ…。それに、龍星君は他人を騙したりするような人じゃないよ…」

「そんなの、分からないじゃない。とにかく、もう関わらないで」

「無理だよ!嫌!」

私はママの事が大好きだ。

反抗した事なんか一度もなかった。

絶対にママを困らせたり、悲しませたりしたくなかったから…。

だけど今回ばかりは、ママの言う事は聞けない。

"龍星君と関わるのをやめる"

なんて…。

そんなの絶対に無理じゃん。

「樹菜、お願い。ママの言う事聞いて!」

素直に"分かった"と言わない私に、ママは大きな声で訴えた。

私は耐えられなくなって、

「ママなんて嫌い!!」

そんな幼稚な言葉を吐き捨て、台所から飛び出した。
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