ほんとの笑顔が見たかったんだ
「空、りゅう君…よく聞いて?」

怯えるような目で見る龍星と、キッと睨む俺に、オカンは真剣な眼差しを向けた。

「ママも分かってるの。空が、りゅう君の事を思って西條さんにそんな事したっていうのは。空は元々優しくて大人しい子だから理由もなくそんな事しないもん」

そう言うと、オカンは俺の顔をチラッと見た。

"でもね"と、オカンは続ける。

「自分に非がないか、考えてから行動しないとダメなの。自分が全て悪いと思って何もかも抱え込むのもダメだし、何でも相手のせいにするのもダメ。ママね…空とりゅう君の歳の頃、何でも周りのせいにしてばかりで、荒れてたの。そのせいで沢山の人傷つけたんだ。だから、二人にはそんな風になってほしくないの」

必死に訴えるオカンの目に、涙がたまっているのが分かった。

正直、まだイライラする。

西條に謝るとか、屈辱的にさえ思える。

でも、オカンは西條に媚びて頭を下げてたわけじゃなかったんだ…。

オカンは、俺の親として、自分の非を認めて謝ったんだ。

龍星も…西條に傷つけられただろうけど、自分の悪かった所を反省して謝ったんだ。

まぁ、全部自分が悪いと思って、自分を責めてるかも知れねぇけど…。

イライラする。

謝りたくない。

でも、オカンにあんな事言われて、それでも謝らなかったら、ガキみたいだし。

「すいませんでした…」

すげぇムカつくけど…、俺は西條に謝った。
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