ほんとの笑顔が見たかったんだ
「私もね、樹菜から龍星君の事をよく聞いてたし、悪い子じゃないとは思ってたの。樹菜が怪我した時も、手当てしてくれたみたいだし。でも…私、心配性だから、近所の人達の噂を聞くと、不安になっちゃってね。樹菜に"あの子ともう関らないで"って言っちゃったのよね…。そしたらあの子、凄く怒っちゃって…」

あの日の事を話すママの声を聞くと、声だけで今の表情が浮かぶ。

多分今、困った顔してる。

そんなママに、楓さんは少し厳しい事を言う。

「そりゃ、じゅなちゃんはショックだったと思うよ?せっかく仲良くなった子と、急に"関るな"って言われてもそんなの納得出来ないじゃん?」

「そうよね…。悪いのは私ね…」

楓さんが私の事をかばってくれたのは嬉しいけど、ママが落ち込むのはショックだな…。

私は、壁に耳をつけながら、俯いた。

また沈黙だ。

どうしよう…。

私の事だし…行った方が良いのかな…?

けど、今登場したら、盗み聞きしてた事がバレちゃうよね…。


私がそんな事を思っていると、楓さんが沈黙を破った。

「サツキさんは悪くないよ。だって、親だもん、子供の事で心配になるのは当然よ。」

「そう…かしら」

「そうよ!…サツキさん、りゅう君はほんとに見た事ないの?よく公園に行ってたから、一回位は見た事あるんじゃない?」

「それがほんとに一回もないの。タイミングが合わなかったみたいで…」

「そっか…。なら、会ってみて!すっごく良い子だから!今、家で空とゲームかなんかしてると思うし、呼ぼうか?」



「えーーーーーーー!?!?」



そう叫んだのは、ママじゃなく…。

私。

ドキッと心臓が大きく動いて、その反動かどうかは分かんないけど、びっくりしすぎて思わず声が出てしまった…。

だって楓さんがいきなり、"呼ぼうか?"とか言うんだもん!!
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