ほんとの笑顔が見たかったんだ
「樹菜!!どうしたの!?」

「じゅなちゃん!?」

大声で叫ぶ私に驚いて、ママと楓さんは慌ててリビングから飛び出してきた。

や、やばい!

「樹菜?こんな所で何大きい声出してるの?」

「えーっと…うーん…なんでだろ?」

"はははー"と、わざとらしく笑ってみる。

無意識に私の体はこの場から逃げようとしていたけれど、結局どこにも逃げられなかった…。

「もしかしてじゅなちゃん…あたし達の話…聞いてた?」

「う、うん…」

苦笑いを浮かべる楓さんの質問に、私は動揺しながらもうなづいた。

もうこの状況じゃ、"聞いてないよ"なんて言えないよね。

"聞いてない"って言っても、"じゃあ何してたの?"って聞かれたら答えられないし…。

「盗み聞きするつもりはなかったんだけど…」

「気になったんだね…」

「…うん」

私は、下を向いた。

どうしよう…。

盗み聞きなんてしなきゃよかった…。

その場がシーンとなる。

気まずい空気が漂う。
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