ほんとの笑顔が見たかったんだ


ソワソワする。

手のひらにはじんわりと汗がにじむ。

だって…私の家に龍星君が来るんだもん…。


「じゅなちゃん、この前さ、空の部屋に入った時びっくりしたんじゃない?」

ソラと龍星君が私の家に来るまで、ママと楓さんとリビングで話していると、私とママの向かい側のソファに座っている楓さんが、困った顔をしながら私に聞いた。

「え、なんで?」

私は、首を傾げる。

そして、ママがいれてくれたアイスコーヒーを一口飲む。

楓さんは苦笑いを浮かべた。

「空の部屋、めちゃくちゃ散らかってたでしょ?」

「あー…」

"確かにね"とはさすがに言えなかったけど、私の態度はバレバレだと思う。

だって花火の後、ソラの家に行って、ソラの部屋のドアを開けた時、目の前の光景に驚いて立ち尽くしたのは事実だし…。

「私、昨日久々に空の部屋に入ったんだけどさ、びっくりしたよ…。"片付け位ちゃんとやってるから部屋入んなよ"とか言うから、空の部屋には入らないようにしてたんだけどさー…そしたらあの様よ!じゅなちゃんには失礼な事しちゃったね…。あんな部屋に上がらせちゃって…」

申し訳なさそうに言う楓さんに、私の隣に座っているママは、

「私達だって、ちょっと気を抜いたらすぐに散らかるわよ!」

と、笑った。

楓さんは"えー、そうかなー?"と、苦笑した後、

「まぁでも今朝ね、"あんな汚い部屋だったら彼女が出来ても、部屋に呼べないわよ!"って言ったら"うるせー"って言いながらも、りゅう君と一緒にちゃんとお片付けしてたけどね!」

と、付け加えた。

ソラと龍星君が一緒に部屋の片付けをしているところを想像すると、微笑ましくなる。

ソラは昔からおとなしくて、正直な話、特別仲が良い子とか、いなかったんだよね…。

そんなソラに、龍星君という友達が出来て、ほんとに良かったって思う。

「じゃ、明日にでもソラの部屋、見に行こうかな!」

「うん、おいで!あの子、喜ぶわ!」

楓さんと笑い合っていると、玄関の呼び鈴が鳴った。

ついに、来た…。

「樹菜、出て!」

ママに言われて、私は玄関に向かった。

とてつもなく緊張する…。
< 72 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop