ほんとの笑顔が見たかったんだ
ほんとだったら、私が龍星君に会いに行くはずだったのに、まさか来てもらえるなんて思ってなかったよ…。

大きく深呼吸してから、

「はーい!」

と、平静を装いながら、玄関のドアを開けた。

「よ」

クールにそれだけ言うソラの隣に…

「じゅなちゃん!」

明るく笑う龍星君がいた…。

金色の髪、少しつり上がった目、薄い眉毛に、 耳のピアス…間違いなく龍星君だ。

十日間、ずっとずっと想い続けていた彼を目の前にすると、胸がキュッと鳴った気がした。

ほんとは龍星君に飛びつきたい位だけど、さすがにそれは変だ。

だから私は、"いつも通り"を意識して明るく言った。

「どうぞ上がってー!」

ドアを目一杯開け、二人を迎え入れる。

ソラと龍星君は口を揃えるように"おじゃまします"と言うと、履いていた靴を脱いだ。

やばいよ!

龍星君が私の家に来たんだ…。

緊張するけど、凄く嬉しい…。

「ソラー、靴脱いだらちゃんと揃えろや。そんなテキトーな事してたらじゅなちゃんに幻滅されんぞ?」

「う、うるせー!じゅなの前で何言ってんだよ!!」

「じゅなちゃんの前だから言ってんの!」

「あー…うぜぇ…」

脱いだ靴を揃える龍星君にからかうように言われたソラ。

文句を言いながらも、ちゃんと龍星君の真似をして靴を揃えている。

なんか、友達というか、兄弟みたいだ。

なんだかその光景が面白くて、"あはは"と笑ってしまった。

「なに笑ってんだよ…」

「なんかソラ、龍星君の弟みたいでかわいいっ!」

「"かわいい"とか言うな!」

私がからかうと、ソラは顔を赤くした。

そんな私達を見て、龍星君は笑っている。

些細な事で笑い合えるのが嬉しい。

「じゃ、リビング行こっか!」

二人にそう言った時…ソラが私の顔をじっと見つめた。

「ん?どうしたの?」

目を丸くする私に、ソラはたずねた。

「じゅな、目、どうした?」

まだ私の目は少し赤かったみたいで、それにソラは気付いたんだ。

「あ、ほんとだ…ちょっと赤いね…」

すると、龍星君も私の顔を見つめて、心配そうな表情を浮かべる。

龍星君に顔を見られたのが恥ずかしくて、私は思わず目をそらした。

「さっき泣いてたの!泣けると噂の携帯小説読んでてさ!」

とりあえず、さっきの嘘をもう一度ついてみる。

私、多分今、顔が引きつっている…。

「それ、マジで言ってんの?」

ソラは私が誤魔化しているのを薄々気付いているのかも知れない…。

だって、小さい頃からずっと一緒にいる幼なじみだから。

だから疑うんだ。

「ほんとだよー!」

「…ならいいけど」

あまり納得のいかない様子のソラを見ると、少し焦る。

「さ、じゃ、リビング行こ!」

半ば強引に仕切り直すように、私は二人に言った。
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