ほんとの笑顔が見たかったんだ
自分の部屋に足を踏み入れてから、"私、なんであんな事言っちゃったんだろう"と少し後悔した。
部屋にソラと龍星君を入れたところで、何を話せばいいのかここにきて分からなくなったからだ。
龍星君に久しぶりに会えて、話せて…嬉しくて私は浮かれていたんだ…。
「適当に座って!」
とりあえず、私は一番最初にベッドに腰掛けた。
ソラと龍星君は、床に腰を下ろす。
「じゅなの部屋、相変わらず片付いてるな」
ポツリとソラは言うと、部屋を見渡した。
その後、シーンと部屋は静かになる。
「暑いね!窓開けるね!」
沈黙に耐えられなくなって、私は窓を開けた。
雨が上がった後の空気のにおいが風にのってスーッと入って来て、それと同時にパパからもらった風鈴がチリンと鳴った。
「じゅなちゃんのお父さん?」
背後で声がして振り返ると、龍星君が私の勉強机に飾ってある写真立てを見つめていた。
龍星君の隣に座っているソラは、切ない顔をしている。
仕方ないよね。
だってソラは私のパパの事、よく知っているもんね。
「そう。私のパパだよ」
写真立てを手に取る。
仕事から帰って来て、ビールを飲んでいるパパの写真。
いつも厳しくてきつい事を言っていたパパが、たまに見せる穏やかな表情を撮ったものだ。
ドキドキするけど、龍星君の隣に私は座った。
「私に似てる?」
写真を龍星君に見せる。
「そうだね…。目がじゅなちゃんに似てるかな?」
「それ、よく言われた!」
龍星君に笑いかける。
そして、私は自然と言った。
「パパ…。私が中学二年の時に、病気で亡くなったの」
また風が、風鈴を鳴らした。