ほんとの笑顔が見たかったんだ
午後11時を過ぎた。
開けたまんまの窓から、ぼんやりと外を眺める。
今日一日を振り返る。
泣いたりドキドキしたりと色々あったな…。
ベッドに腰掛け、大きくタメ息をこぼす。
龍星君の顔が、頭から離れない。
龍星君…家族といったい何があったんだろう…。
「分かんないよ…」
コテっとベッドに横になると、タイミングよく携帯電話の着信音が鳴った。
画面に表示されているのは、珍しい名前。
「もしもし?」
寝転びながら、電話に出た。
「遅くにごめん。今いい?」
「いいけど、急にどうしたの?」
相手はソラだった。
ソラと電話なんて滅多にしないから、少しびっくりした。
「あのさ…。じゅなは悪くないから」
「え…?」
ソラは唐突に言ったから、私は首をかしげた。
「龍星の事だよ。その…じゅながさ、龍星に家族の事聞いた時に…あいつ、様子おかしかっただろ?あの時、じゅな、謝ろうとしたじゃん?でも、じゅなは謝る必要なんてないから」
「う…うん」
コクリと頷く。
ソラ、私の事を気にしてわざわざ電話をかけてきてくれたんだね。
「今日の龍星の様子を見て分かっただろうけど…あいつ…家族と色々あるっぽい。まぁ、深い事は知らねぇけど…」
「ソラ、ほんとは色々知ってるんでしょ?」
「知らねぇよ」
「だって今日、龍星君もだけど、ソラの様子もおかしかったもん。ねぇ…私も知りたいよ…教えて?」
必死になってしまう。
だって、私も知りたいよ。
龍星君の無理矢理笑う表情を頭の中で思い浮かべると、もう無視なんて出来ない。
目を反らすなんて出来ないよ。
ソラは少し間を置いて言った。
「ほんとにマジで、深い事は知らねぇよ…。ただ…あいつが俺に言ってたのは、兄貴と…仲が良くないって事と、あいつの母親は昔は優しかったって事だけ。それ以外は何も知らねぇ。俺だって、いくらあいつと仲良くやってるって言っても、深い事は聞けねぇよ。家族の事に…さすがに口出せねぇし」
やりきれない様子が電話から伝わってきた。
確かにそうだよね。
家庭の事は…確かに入り込めないよね。