ほんとの笑顔が見たかったんだ


「じゅなちゃん!」

ソラの部屋のドアを開けると、テーブルの前に座ってちゃんと宿題をしていた龍星君が、いつものように笑顔で私の名前を口にした。

「こんにちは!龍星君!」

そして私も、笑顔で彼の名前を言った。


ソラはと言うと…。

ベッドに横になって、眼鏡を外してスヤスヤと眠っている。

"午後の2時に行くね"って、あらかじめ伝えていたのに!

呆れちゃうよ…。

「もう!ソラ!なに寝てんのよ!」

ソラに近付き、ソラの体を揺すってみる。

「龍星…うるせぇー…」

ソラは寝ぼけて眉間にシワを寄せる。

「龍星君じゃないよ!樹菜だよ!」

「じゅな…?」

ソラはゆっくりと目を開ける。

「よく…見えねぇ…」

じっと目をこらして私の顔を見ようとするソラ。

「ほら!」

私はソラの枕元に置いてあった眼鏡をソラに手渡した。

ソラは眼鏡をかけると、ソラの顔を見下ろしていた私を見て顔を赤くした。

「…じゅな…!び、びっくりさせんなよ!」

そして慌てて私に背を向けた。

私、びっくりさすような事してないんだけど!

「もう!なに言ってんの!とにかく起きてー!宿題するんでしょ!」

さっき以上にソラの体を揺する。

「後5分だけ寝る…」

するとソラは、タオルケットで体を隠した。

「じゃあ龍星君と先に始めとくからね!」

もうソラなんか知らないからね!

「龍星君、先に…」

"始めよっか"と龍星君に言おうとしたけど、龍星君もそれどころじゃない様子。

「やべー…ソラ超おもしろい!」

お腹を押さえながら爆笑中の龍星君。

「俺とじゅなちゃん間違うとか、寝ぼけ過ぎだろ!」

「ほんとだよね!」

私も龍星君につられて笑ってしまった。
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