ほんとの笑顔が見たかったんだ
「うっせぇー…」

そんな私達の会話を聞いて、ソラは私達に背を向けたままボソッと言った。

"5分だけ寝る"とか言って…


「寝てないじゃん!」

「寝てねぇじゃん!」


私と龍星君の声がシンクロした。

お互い顔を見合わせた。

思わず顔が赤くなった。

顔を見合わせて数秒後…再び私達は笑い合った。


すると、コンコンとドアを叩く音が聞こえ、間もなくしてドアが開いた。

「おやつだよー!」

明るく言いながら、楓さんが部屋に入って来た。

お菓子とジュースを載せたトレイを手に持っている。

ニコニコしていた楓さんだったけど、ベッドで寝転んでいるソラを見て呆れた表情を浮かべた。

「空!!何寝てんのよ!!せっかくじゅなちゃん来てくれたのに!!」

そして、大き目の声でソラに言う。

「デカイ声出すなや…」

そう言いながら、まだタオルケットにくるまるソラ。

起きてるんだったら早く起き上がればいいのに…。

「楓さん!ソラね、寝ぼけて俺とじゅなちゃん間違ったんだよー!」

呆れる楓さんに、龍星君はまるで自分の母親に言うみたいに楓さんに言う。

その姿が、なんか愛しく思えた。

「そうなのー?おバカさんね!」

「でね、じゅなちゃんの顔を見た途端、急に顔を赤くしちゃって、顔を背けたんだよ!」

「そうだったんだ!空、可愛いぞ!」

二人の会話を聞いていると、なんだか和む。

楓さんと龍星君、まるでほんとの親子みたいだよ。

「可愛いとか言うな!!」

急にガバッと起き上がると、ソラは楓さんを睨んだ。

さっきより顔が真っ赤なんだけど…。

「空…ほんと可愛いわ!ママね、空のそういう所大好きだよ!」

そんなソラを見て、楓さんは笑った。

「オカン、マジでうるせぇー。目が覚めたら…じゅながいたから…びっくりしただけだし…」

段々声が小さくなってますけど…。

びっくりしたからと言っても、そんなに取り乱す事ないと思うんだけどな…。
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