ほんとの笑顔が見たかったんだ
「はいはい。分かった分かった。とにかく、ちゃんと宿題やりなさいよ!」

楓さんは、顔を赤くして呟くように言ったソラを見て軽く笑う。

「うるせぇよ。さっさと行けや…」

「どうしよっかなー。ママ、もう少し空の事見ていたいなぁー」

「アホか!!ちゃんと宿題やるからもうあっち行ってろ!!」

ソラにそう言われた楓さんは、"分かりましたー"と、流すように言うと、手に持っていたトレイをテーブルに置いた。

そして、

「ママ、ちょっとお出かけするからお留守番もたのむわよ!」

そう言って部屋から出て行った。

部屋がシーンとする…事はなく、龍星君は相変わらず笑っている。

確かに、楓さんとソラのやりとりは面白いもんね。

楓さんがからかうと、ソラ、いちいち怒るんだもん。

「あー…もうなんなんだよ…」

ボソッと言うと、ソラは大きくタメ息をつく。

そしてベッドから降りて、私の隣に座った。

「ソラ、お前ほんと良いキャラだよ。改めてそう思うわ」

「改めて思わなくていいっつーの…」

龍星君に言葉をかけられると、ソラは楓さんが持って来たジュースを一気に飲んだ。

なんでソラがあそこまで取り乱したのかは少し疑問だ。

でも、今はとにかく宿題、だよね。

「ソラ、宿題しよ!龍星君、頑張ってるよ!」

「…うん」

渋々…と言った様子でソラは問題集を開いた。

まだ空の顔、少し赤い気がする…。

ま、気のせいか。

「このページから全然分かんねぇから教えて」

空の顔に向けていた視線を、開かれた問題集に向けた。

問題を見ると…多分、全部教えられそうだ。

「分かった。これはね…」

数式をルーズリーフに書き出した。
< 84 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop