ほんとの笑顔が見たかったんだ
初めて二人で公園で話した時も、怪我をして私をソラの家まで連れて来てくれた時も二人っきりだったのに…。

"好き"って認めているだけにやっぱりすごく意識してしまうよ…。

とりあえず、ジュースを飲んで、お菓子をつまむ。

「あー…こんなにちゃんと勉強したの、久しぶりだー」

うーんと龍星君は伸びをした。

そして、

「じゅなちゃんのおかげで、俺らちょっとだけ頭良くなったんじゃね?」

と、笑った。

私もつられて笑う。

龍星君が、お菓子に手を伸ばす。

そんな彼に、私は何気なく聞いた。

「楓さんに聞いたんだけど、煙草…やめたんだね」

「うん。やめた!」

「吸いたくなんないの?」

「すげー吸いたくなるよ!"あー煙草吸いてー"ってよく思うし!」

やっぱり、そうだよね…禁煙って大変って聞いた事あるもん。

「そっか…」

私はそれだけ言ってジュースを一口飲んだ。

そんな私を見て、龍星君は優しく微笑む。

「でも、俺にとってはこんな風にじゅなちゃんやソラと過ごす時間が一番大切だしね!だから煙草なんてどうでもいいし!」

その言葉が、とても温かく感じた。

嬉しくて、少し泣きそうになる。

「嬉しい事言ってくれるねー!」

あえて私は明るく返す。

すると、龍星君は急にその場に寝転がった。

ちょうど私の正面に座ってたから、寝転がると全く顔が見えない状況。

どうしたんだろ…。

「龍星君?」

私がそうたずねると、龍星君は呟いた。



「二人に出会えてほんとに良かった。このままずーっと夏休みが続いたらいいのに…」



音楽も何も聞こえないこの部屋に、その声は小さく響いたような気がした。

温かさと切なさが混じった言葉。

それにどう返したらいいのか分からず、私は一瞬固まった。

そして絞りに絞った言葉を彼に伝えた。

「私も、龍星君に出会えて良かったよ!」

なるべく、明るく。
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