ほんとの笑顔が見たかったんだ
「じゃあ、またね!」

ソラの家の玄関の前で、私達は別れた。

玄関のドアが閉まった所で、私は歩き出して自分の家へと向かう。

「ただいま…」

自分の家の玄関のドアを開け、入ろうとした時だった。


「じゅな!!」


いきなり後ろから声がした。

振り返ると…そこにはソラが一人で立っていた。

「ソラ、どうしたの?」

一度開けていたドアを再び閉める。

今別れたばっかりなのに…どうしたんだろ?

「あのさ…じゅなさ…」

言いにくそうに、ソラは言葉を詰まらせる。

「ソラ?」

「…じゅなさ」


少しの間だけ、シーンとして沈黙になった。

だけど、思い切ったかのように、ソラは私に言った。




「じゅなさ、龍星の事好きだろ」




時間が止まったみたいに、まばたきする事も忘れたんじゃないかと錯覚する程に…私は
言葉も返せず、黙り込んでしまった。

「図星か…」

そんな私を見て、ソラはなぜかタメ息をついた。

って言うか、私まだ何も言ってないじゃん…。

「じゅなさー、ほんと分かりやすいよなー」

固まって動けずにいる私とは対照的に、ソラは一方的に喋る。

"分かりやすい"って…そう言えば前にルリカにも言われた気が…。

「おい、なんか言えや」

「え…えっと…えーっと…」

言葉にならない文字を口に出すのに精一杯で、頑張って出来た行動は、"ははは"と、無理矢理笑う事だった。

「バーカ。ごまかしてんじゃねぇよ」

まただ…!

ソラは、また祭の時に見せたようにムッとした表情を浮かべた。

もうだめだ…。

ソラとは誰よりも長い付き合いだもん、もう絶対にごまかせないよね。

「で、どうなんだよ?」

「う、うん…そうだよ」

下を向きながら、私は小さく頷いた。
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