ほんとの笑顔が見たかったんだ
「そっか…」
たった一言そうつぶやいたソラ。
「うん…」
私もソラと同じように言う。
もう心臓の鼓動の速さは自分ではゆっくりする事は不可能な位だ。
「それだけ、聞きたかっただけだら。じゃ…」
私の顔を見ないまま、ソラは背を向けて歩き出す。
「ソラ…!待って!」
「ん?」
素っ気無い表情で、ソラは振り返る。
「何で…分かったの?」
恥ずかしくて、目をキョロキョロ泳がせる。
こんな事聞いたら、益々自分が恥ずかしくなるだけだって分かっているのに…。
「だってじゅな、龍星の事ばっかり見てんじゃん」
「そ…そんな…」
「俺には見せた事ない表情で龍星の事見てんじゃん」
「え…」
「バレバレだっつーの。ずっとじゅなの事見てきた俺にはすぐに分かるから」
そう言いながら、ソラは小さく笑った。
「龍星君には言わないでね?内緒だよ?」
不安げに、言う。
「言わねぇよ。ま、頑張れや。俺になんか出来る事あったらするし。じゃ」
速い口調でそう言うと、ソラはその場から去って行った。
夏の虫があちこちで鳴いている。
私は動揺して、その場にしゃがみこんだ。
「ソラにばれちゃった…」
小さく一人でそうこぼす。
しばらく、私は動けずにただただ座り込んだ。